5月14日(土)ホルプ先生講演会「ヨーロッパ政治の現状 Current Political Situation in Europe」

プラハのホルプ先生とZoomを利用したオンライン形式での講演会は予定通り行われました。

*講演の要旨この項目のコメント欄に友好協会の髙橋恒一会長がまとめを掲載しています。また、前回(1月13日)の講演要旨は、ホームページ/アクティビティ/講演/1月13日ホルプ先生新年講演会/でご覧いただけます。

今回は2022年1月のオンライン講演以降に発生したウクライナ危機とそのチェコやヨーロッパ各国に及ぼした影響について様々な事情や立場により異なることとなった経済制裁の方法や避難民への対応などにも話が及び、前回同様に活発な質疑応答が行われました。

1月の講演では「2022チェコとEUをめぐる5つのテーマ 」と題し、チェコ総選挙を踏まえたフィアラ政権の発足、オーストリア、ハンガリー、スロバキア、ポーランドなど近隣諸国の政治の流動化、ドイツの3政党連立による新政権発足、2022年の前半のEU議長国のフランス大統領選挙の行方と6月からEU議長国を引き継ぐチェコ共和国の役割、更にはリアルタイムで行われていた米ロ、EU/ロシアによるウクライナを巡る安全保障についてのハイレベル協議等に言及され、2022年前半に欧州情勢が大きく変動する可能性があることを示唆されました。この講演後に突如としてロシアによるウクライナ侵攻が開始され、欧州は第二次世界大戦後最も緊迫した情勢となりました。この新たな状況下のチェコと欧州について、ホルプ先生に再びオンライン講演をしていただくことになりました。 

日時:    2022年5月14日(土)18:00 よりオンライン形式(Zoom)にて開催

演題:     『ヨーロッパ政治の現状』

費用:     会員1,000円 非会員 2,000円

申し込み: (定員100名) 

お申し込みは終了しました。

5月14日(土)ホルプ先生講演会「ヨーロッパ政治の現状 Current Political Situation in Europe」” に対して1件のコメントがあります。

  1. 髙橋恒一 より:

    ホルプ先生の講演
    「ロシアのウクライナ侵攻後の欧州政治情勢」を聴いて
                                                        髙橋恒一

    5月14日にホルプ先生が「ロシアのウクライナ侵攻後の欧州政治情勢」と題し、オンラインによる講演をしてくださいました。約30名の皆様にご参加いただいたこの講演において、先生は2月24日に開始され現在も続いているロシアのウクライナ侵攻が欧州に如何なる影響を与え、また欧州諸国がどのように対応しているかについてお話してくださいました。具体的で分かり易く示唆に富む素晴らしい講演をして下さった先生に御礼申し上げるとともに、8月に先生の来日が実現し、久しぶりに対面でお話を伺えるのを楽しみにしています。以下概要を報告します。

    政治学は、戦争について一旦始まってしまうと、いつ、どのように終了させるかについて誰にも分からなくなるものと教えているが、今回のウクライナでの戦争も開始から早3ケ月になるが、終結の見通しは全く立っていない。個人的には、政治的・外交的に和平が達成されることを希望するが、専門家の中には戦争の長期化を予見するものも少なくない。また戦争においては関係者による発表にはすべて多かれ少なかれプロパガンダが含まれているといわれているが、今回の戦争についても、情報は溢れているものの、戦況が本当にどうなっているのかは、良くわからない。

    先ずロシアのウクライナ侵攻自体については、米国、EU諸国だけでなく中立的な国も含め、ほとんどすべての国が国際法違反として政治的非難を行っており、多くの国が直接的又は間接的にウクライナでの戦争に参加している。しかしながらロシアに対する経済制裁に関しては、ロシアからの原油や天然ガス等の輸入にどの程度依存しているかにより、国ごとに対応が異なっている。多くのEU諸国のエネルギー面でのロシアへの依存度は、20-50%であるが、中には100%依存している国もある。経済制裁として最も効果的なのは、EUとしてロシアからのエネルギー輸入の禁止を決定することであるが、同措置はロシアへの依存度が高い国にとり経済的なダメージが大きすぎるため、極めて困難と考えられる。ウクライナ軍への武器の供与に関しては、数ケ国が既に重火器の供与を決定しているが、詳細なデーターは、公表されていない。また、大統領や首相等の各国の政治的指導者のウクライナ訪問などによるウクライナへの政治的・外交的支援も盛んに行われている。

    戦火から逃れるため近隣諸国へ避難している大量のウクライナ避難民の問題が、いくつかの受入国(特に200万人以上受け入れているポーランド)にとり、重い負担となっている。チェコも約30万人を受け入れている。避難民の問題は、非常に複雑な問題である。受け入れは先ず食料と避難場所の提供といった人道的支援から始まるが、すぐに中期的・長期的な問題を解決しなければならなくなる。例えば避難民の中には既にチェコ永住を決めた人もいる。こうした人々のためには、子供の教育、成人の就職を含むチェコ社会への統合のための支援が必要となる。幸いウクライナ語はチェコ語と似ているので、コミュニケーション上の問題は、比較的少ないようである。他方大多数の避難民は、戦争の終了後に家族や財産を残してきた故国へ帰ることを希望している。更にチェコ同様多くのウクライナ人が定住しているオーストリアやドイツへの移住を希望している避難民もいる。いずれにしても30万人の避難民の将来が如何なるものになるのかは、今後の戦争の推移にかかっている。

    ウクライナの問題を考える時には、ロシアが今後どうなるかについても考えておく必要がある。ロシアは、現在、欧州を除く世界各地で必死になって同盟国やロシアの立場を支持してくれる国を探している。先ず特別関係にある中国との間では、政治・外交面、経済面更には軍事面での協力関係を一層強化しつつある。更にインドや東南アジア諸国に対しても経済面や軍事面での協力を梃にウクライナ問題で米国やEUに同調しないように働きかけ、ある程度の成果を挙げている。またアフリカや中南米においても、数ケ国と非常に緊密な友好関係を築き、影響力を強めつつある。 私見ではロシアのウクライナ侵攻が続く中で、欧州とアジアにおける地政学的な関係が再編成されつつあるように思われる。このような情勢の中で、米国は、ウクライナへの経済的・軍事的支援は精力的に行っているものの、大局的観点よりウクライナでの戦争をどのように終結させるのかというシナリオについてはその立場を明確にしていない。

    この他、当面の欧州政治情勢で注目すべき点を挙げれば次の通り。
    (1) ロシアのウクライナ侵攻により政治・安全保障情勢が激変した欧州においては、次々と新しい動きが報じられている。安全保障政策に関して中立的な立場を維持していたフィンランドとスウェーデンがNATOに加盟するという少し前までは考えられなかった事態も今や現実味を帯びつつある。
    (2) 最近行われた英国の地方選挙の結果、北アイルランド問題を巡るEUと英国の対立が再燃する恐れが強まっている。
    (3) 6月に行われる仏の議会選挙でマクロン大統領の与党が苦戦と伝えられている。選挙結果次第では、仏のウクライナ問題政策にも変化が生じうる。
    7月から半年間、チェコは欧州理事会(EUサミット)の議長国となる。5党連立政権を率いるペトル・フィアラ首相が、ウクライナにおける戦争の終結、ロシアに対する経済制裁、英国との関係、昨年決定した新環境政策(脱炭素化)の取り扱い、未だ油断できないコロナ対策といった多くの困難な問題を抱えるEUにおける政策調整のかじ取り役となるわけで、その政治手腕の試金石となろう。   (了)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。