新刊案内 ヴァーツラフ・ハヴェルの戯曲「通達・謁見」

 阿部賢一・豊島美波 訳

チェコ共和国初代大統領として知られるヴァーツラフ・ハヴェルの戯曲二作品をまとめた『通達/謁見』(阿部賢一・豊島美波 訳)が松籟社より今月発売となります。戯曲家ハヴェルによる60・70年代をそれぞれ代表する作品です。

両作品のあらすじは次の通りです

『通達』
 十二場からなるこの作品は、誤解をもたらすことのない、きわめて精確な人工言語プティデペがとある役所に導入されたことで翻弄される人びとの様子が描かれている。熱血漢のグロスは局長であるというのに、人工言語の導入を知らされていない。導入を秘密裏に進めていた局長代理バラーシュは、無言のクプシュとともに、グロスの包囲網を張り巡らす。かたや、極めて難解なプティデペの授業が行なわれたり、翻訳センターの面々も登場するが、前者では言語の構造についての疑似学問的な解説がなされ、後者では翻訳とは無関係な日常会話ばかりが披露される。グロスはバラーシュと役職を交代し、プティデペの導入を阻止できたものの、今度はホルコルという新しい人工言語が導入される……。
『謁見』
 本作に登場するのは、インテリの作家フェルディナント・ヴァニェクとビール醸造所の醸造長の二人のみ。作家ヴァニェクは、何らかの理由で自作の発表ができず、あるビール醸造所で肉体労働をしている。ある日、上司の醸造長に呼び出されたところから、作品は始まる。醸造長はビールを飲めないヴァニェクに対して、ビールを次々と勧めながらあれやこれやと脱線しながら、二人の会話は続く。そして醸造長がヴァニェクを呼び出したのは、当局に提出するヴァニェクの報告書を本人に書いて欲しかったからだということがわかる。つまり、自分の密告書を自分で書くという不可思議な状況にヴァニェクは置かれたのだった。

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